ボクのすきなもの


「日本代表選手で一番だれが好きですか?」


なんて、誰にも聞かれない質問に勝手に答えてみると、ちょっと前まではやっぱり柱谷哲二と返すのです。
ドヘタクソのくせにやけに熱く、頼んでもいないのに強烈なキャプテンシーを発揮する、どこか滑稽にも見えるあの男は本当に大好きなプレーヤー。


ヨハンクライフいわく「才能のある選手は多いが、炎のようになれる選手が少ないんだ」って。
単純なメンタルだけの話ならば、柱谷さんは本当に炎のようなプレーヤーだったなぁ。
去年くらいまでは一番だったなぁ。
はてさて、今、聞かれたら


「日本代表選手で一番だれが好きですか?」


松田直樹


松田直樹と答えるしかないじゃない。
唯一、柱谷のメンタルの系譜を継いだこの男のことが本当に好きだ。
抜群のフィジカル、ディフェンダーとしては傑出したテクニック、そしてその快活にして狭義溢れるメンタル。
ボクが望んでその欠片さえも手に入れられなかった全てを、彼は持っていた。


何にも負けなかった。
誰にも媚びなかった。


トルシエにも、ジーコにも、岡田にも、中田にも、マリノスにも、全てに。
ただいつだって、バカみたいに熱くて、ケンカ腰で、真摯で率直だった。


笑ってしまうよ。


そのエピソード全てにウソや停滞やごまかしがなくて、全てが松田らしい。
こんなサッカーバカ、いないよ。
違うなぁ。
こんなバカいないよ。
どの分野であろうとこれほど真摯で嘘がない人間なんて、きっといない。


しょうがねぇなぁって。
もっとやれって。
ワクワクすんだよなぁ。


いや、そういうのを話したいんじゃないんだよなぁ。


なんか、いいんだよ、松田。
3年に1回は必ず見る「6月の勝利の歌を忘れない」ってDVDの松田が超いい。
あれは、松田の熱と、森岡の痛みと、川口の怒りの話だったりすると思う。


「山本コーチと昨日チョーケンカした」って、試合で勝ったあとに心の底からつぶやく松田。
「フラット3なんて関係ねぇ、結局点取られなきゃいいんでしょ」ってコーチに言い捨てる松田。
「中田がとぶーぞ中田がとぶーぞ中田がとぶーぞー」って平気で中田をいじる松田。


最高だ。
頭が悪いし嘘がない。
本当にマツダで、最高だ。
カメラが自然に松田を追うよ。


あのマリノスでの最後の挨拶は完コピしたいと練習したが、途中で挫折。
あれはモノマネでもきっと誰の心にも届くのです。


いや、そういう話がしたいんでもないんだよなぁ。


いくら年棒を下げられても一発サインしたマリノスをあっさりクビになり、次に選んだ松本山雅FC
そういや、セレッソに行く話もあったなぁ。
そうなりゃ、もっと面白いのになぁ、とかあの頃はたしか思ったか。


それでも、ワクワクした。
まだまだやれるはずのアイツがJFLで、あの美しいスタジアムで有名なあそこに行くなんてこりゃたまんねーロマンティックだと。
美しいスタジアム、熱いサポーター。
そこで、虎みたいに笑うおっかねぇ松田。
最高だ。
最高じゃないか。
序盤、ぼちぼちうまくいってなかったけど、まぁなんかワクワクするよなぁ、とか思いながらたまに見てたよ。


見てたよ。


なんだよ。
なんなんだよ。
なにしてんだよ。
どうなってんだよ。


そうじゃねぇだろ。
そんなん、おもしろくもなんともねーじゃん。
ドラマチックならいいってもんじゃねーんだよ。
バカじゃねーの。


これからだろ。
ボロボロになるまで、やってくれるんじゃねーのかよ。


これでさぁ「松本山雅一丸となってJFL制覇!」とかしたらさードラマチックで感動とかしそうじゃない。
オレ、もう、そんなんどーでもいーよ。
正直、ホント、どうでもいいんだよ。


あーちくしょう。
ああ、ちくしょう。
なんてこった。
マジで、ホントに、なんてこった。


報われて欲しかったなぁ。
なんでだろうか。
勝手に思ってんだ。


ほんと、ちくしょうだよ。
やってられねぇよ。


そうなの、こういう話がしたかったの。
中身のないグチが言いたかったの。


単純にやってられねぇの。
ありえないのさ。
外人みたいなフィジカルで。
そこらへんのボランチなんかよりテクニックがあって。
沈着冷静が第一義のはずのディフェンダーがあんなにも熱くて。
そんな奴が、ピッチの上で心臓が止まって死んじゃうって?


あんなに無邪気に笑える34歳が?


ありえねぇよ。
ワケわかんねぇ。
そんなの、ワケわかんねぇよ。
おかしいじゃん。
ぜったい、おかしいよ。


おかしいのになぁ。