中田英寿というアイコン

敗因と

敗因と

久しぶりに金子さんの本を読んだ。
というよりも、戸塚さんの本か。


いやー悲しい悲しい切ない切ない。
ドイツW杯時のギクシャクした雰囲気がてんこ盛り。
ホントの悪口コメントを言った人間が匿名にきっちりなってるあたりもリアルで泣きたい。
中田が悪い、ジーコが悪い、小野が悪い、戦犯探しがいかようにでも。
あえて責任を押し付けるなら、一番えらい川渕チェアマンあたりにしとくしかない。


結論。
みんな悪いし、悪くない。


日本の組織、団体でありがちな結論に落ち着くことができてしまう。
こういう結論が日本にはホントに多いなぁ。
組織の和の尊重、というか個人の欲望が突出しにくい日本ではこうなるのは必然なのかもしれない。
個人による明確な悪意や欲望による汚職・腐敗ではなく、組織に対する間違った献身がこういう結論を引き出すんだろう。
で、またしてもありがちな日本の国民性に対する批判。


それはどうよ。


欧米型の競争意識、個の独立を推奨したところで、あちらさんはあちらさんで失敗しないのか、と。
対極の価値観で相殺しようとしたところで、ただ別の形の失敗例になるオチなんじゃないのか、と。
必要なのはこの『日本的な』枠組みでのバランスじゃないのか、と。
トルシエのときの秋田や中山が必要なだけじゃなかったのか、と。


組織の和という大前提の中で、スパイスとしての個人の必要性あたりで話をまとめてしまいたい。
あら、オシムの形だわ。
エクストラキッカーは3人まで。


ホントに極論には意味がない。
真理や極意なんてものに惹かれてみても、そんなものはこの世のどこにもない。
スポーツでも組織でも人間関係でも恋愛でも、あきらめないでちょうどいいバランスを探す努力が大切なんじゃないかと。
極論が大好きなオレがそんなことを考えてみた。


で、中田英寿だ。
どんなエピソードが出てきても僕はやっぱり中田英寿を同情的に見てしまう。
この山梨県生まれのオレたちの同級生は共感の塊だ。
時代と世代を表しまくっていた。


名誉や肩書きよりも自分に向いた職場だろ、とか。
仕事とプライベートは完全に別なんだぜ、とか。
礼儀や慣習なんかよりも実力だろ、とか。
自分の着たい服を着るんだぜ、とか。
グローバルスタンダードなんだ、とか。
金よりも大切なことがあるぜ、とか。


そういうものを彼の中に見た。
バブル世代やゆとり世代とかとはちょっとだけ違う価値観をもった僕たちの浮いた感じを見てしまった。
年齢が上がり組織の中で実力以外の部分を必要とされちゃうのも、会社に入ってそういう思いを抱きはじめた30代と合ってしまった。
中田本人にしてみりゃ、そういう『サポーター』が一番迷惑でキモイと思ってるんだろうけれど。


まぁ、どっちにしても引退した中田なんかに用はないんだ。
嫌々そうにボロボロになるまでやって欲しかった。
そういうシュチエーションが好きなんだ。
それでも光るは強烈で純粋な意思。




2012年、イタリア、セリエC。
昇格争いに食い込むこともなく、今日の食い扶持と少しだけマシなクラブに移籍するためにプレーする選手たちの中に東洋人がひとり。
練習はいつも最後まで居残り、試合後のロッカールームからは早々に立ち去る寡黙な選手。
昔は結構有名な選手だったらしいが、それ以上のことを知る選手は誰もいない。
シンプルなプレーと年齢に不相応な肉体で『まぁ使える選手』との認識があるだけ。


練習が始まる30分前、今日も朝靄の中を走る彼のことも誰も知らない。
このチームではもちろん、彼の母国でさえももう記憶の靄の中にしかない。


彼は、今日も走る。
もちろん、明日も。
何のために走るのか?
聞かれても彼は答えないだろう。
答えてくれたとしても『仕事だから』というにべもない返答くらいしかくれないのだろう。


彼は、いつも、ひとり
共感や理解を求めるのは随分前にやめてしまった。
ボロボロになっても孤高をきどれるならば、彼はそれで満足だ。
名前は、中田英寿
昔は結構有名だったフットボールプレイヤーだ。





きもちわるい。


さようなら中田英寿
あなた以外にひとりで日本代表を勝たせることのできる選手は出てきてないけど。
プレーヤー的には技術や身体能力より、ヘッドスピードとシンプルさの重要性を示してくれた選手としてちょっと感謝している。
まぁ、結局それだけじゃダメなんだけどね。
まぁ、結局中田さんはバリバリフィジカルの選手なんだけどね。


ありがとう中田英寿
どうか、オグラのようにはならないで。
なれないだろうけど。
ファッション関係の仕事につきました、とかもやめてくれ。
そういうんじゃない。
おまえはそういうんじゃないんだ。


税理士とか本気でやってくれると『らしいなぁ』と思うかもしれません。
そういうのが、いいな。
関係ねぇ、みたいのがいいな。


それと、なんか、ありがとう。
いろいろ、たくさん、ありがとう。
お疲れさま。


気持ち悪い文は長くなる。
それにしても中田浩二はイイヤツだ。
すきだよ、コウジ。